災害時のアスベスト飛散リスク

地震や豪雨で建物が倒壊すると、通常の解体工事とはまったく異なる形でアスベストのリスクが噴出する。事前調査も、飛散防止の養生も間に合わないまま、建材が破壊され、粉じんとなって飛び散ってしまうからだ。2024年1月の能登半島地震は、この問題を改めて突きつけることになった。

能登半島地震で明らかになった課題

能登半島地震では、被災した建物を取り壊す「公費解体」が大規模に進められた。しかし石川労働局は、一部の解体業者に対してアスベストの飛散防止策が不十分だとして行政指導を行い、業界団体にも対策の徹底を求める事態となった。倒壊・損壊した建物の解体は通常の工事以上に安全管理が難しく、防じんマスクを着用しながらの作業でも「暑くて息苦しい」といった現場の声が報じられている。石川県は、被災した一般家屋にも石綿含有建材が使われている可能性があるとして、住民や災害ボランティアに向けた注意喚起のリーフレットも公表した。

ボランティアも無関係ではいられない

能登半島地震では、被災地の片付けに延べ18万5千人を超える災害ボランティアが参加した。倒壊した建物やがれきの中にはアスベスト建材が含まれている可能性があり、家屋の片付けやがれき処理に携わる人々自身が、知らぬ間にばく露するリスクを抱えることになる。中皮腫や肺がんは吸引から30〜40年ほどの潜伏期間を経て発症するため、災害復旧の現場での一時的なばく露が、何十年も先の健康被害につながる可能性は否定できない。

東日本大震災からの教訓

2011年の東日本大震災でも、環境省・厚生労働省が合同で「東日本大震災アスベスト対策合同会議」を設置し、がれき処理作業などにおけるアスベストの気中濃度モニタリングを繰り返し実施した。津波で打ち上げられた船舶の解体作業まで含めて、大気汚染防止法上の扱いが検討されるなど、平時とは異なる緊急対応の枠組みが必要になった。災害という非常時こそ、平常時に積み上げてきた規制の網から漏れやすい局面であり、行政・ボランティア・住民それぞれが、平時以上にアスベストへの警戒を持つ必要がある。