空き家とアスベストの放置問題

解体現場のアスベストにばかり目が向きがちだが、実はもっと静かに進行しているリスクがある。誰も住んでいない「空き家」に眠るアスベストだ。2023年の総務省統計調査によると、全国の空き家は899万戸、空き家率は過去最高の13.8%に達した。中でも、長期間不在で使用目的のない「放置空き家」は385万戸にのぼり、この20年で1.8倍に増加している。

古い空き家ほどアスベストのリスクが高い

使用目的のない空き家(その他空き家)349万戸のうち、7割以上が一戸建てで、木造の一戸建てが最も多い。さらに、これらの空き家の3/4超が1980年(昭和55年)以前に建てられたものだ。これは、アスベストが最も多用された時期とほぼ重なる。つまり、放置空き家の多くは、アスベスト含有建材が使われている可能性が高い建物ということになる。

「管理されない」ことがリスクを増幅させる

解体現場であれば、法律上の事前調査や飛散防止措置が求められる。しかし、誰も住んでおらず取引もされない空き家は、そもそも人の目が入らないまま老朽化が進む。屋根材や外壁材が劣化し、雨風にさらされてひび割れや剥落が進行すれば、アスベスト含有建材から繊維が飛散するリスクが、解体作業とは違う形でじわじわと高まっていく。実際、腐朽・破損ありの空き家は全国で約101万戸にのぼるとされ、老朽化が「待ったなし」の水準に達している物件も少なくない。

所有者不明のまま、リスクだけが残る

空き家問題が厄介なのは、所有者が既に亡くなっていたり、相続人が管理を放棄していたりして、責任の所在があいまいになりやすい点だ。空家法の改正により所有者の管理責務は強化されつつあるが、「誰も手をつけられないまま朽ちていく建物」が全国に存在する構図は簡単には解消されない。近隣に長期間放置された空き家がある場合、外壁や屋根の劣化状況を気にかけておくことが、将来の飛散リスクを早期に察知する手がかりになる。